2016年11月29日

【事例】双極性感情障害のA子さんの場合

 

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双極性感情障害・30代女性A子さん
⇒障害基礎年金1級(障害認定日遡及認定)決定

 

A子さんは、数年前から抑うつ気分や不眠、食欲不振などの症状に悩まされ、精神科を受診。通院と治療を続けた結果、「双極性感情障害」との診断を受けました。

 「双極性感情障害」とは、いわゆる「躁うつ病」と呼ばれているもので、気分が高いとき(躁状態)と低いとき(うつ状態)の感情の波の高低差が特徴とされています。

症状の現れ方などから、当初は「うつ病」と診断されるケースが多く、A子さんも、発症時は「うつ病」として治療を開始し、その後の過程で「双極性感情障害(躁うつ病)」とされたそうです。

 1日中ベッドに寝たきりで泣いて過ごす日もあれば、攻撃的になり、家具を包丁で切り付けたり、見知らぬ人に激昂し怒鳴りつけてしまうトラブルなどもあったそうです。過呼吸を起こしてしまう程の極度の興奮状態と、ベッドから起き上がれず動けない抑うつ状態との感情の高低差は、まさに「双極性感情障害」の顕著な症状と言えるでしょう。

このような感情の波に悩まされ、家事はもちろん、通院や身の回りの事についても家族の援助が必要な状態でした。

 障害年金の事を知ったのは、発症してから約8年程経過してからの事。

その後インターネットなどで調べた結果、申請を決意。当事務所に相談・ご依頼となりました。

 

申請のポイント

今回のA子さんのケースでは、相談の時点で、発症・初診日から5年以上経過していました。すると、次のような問題が出てきます。

①初診日の記録が残っていて、証明が出来るだろうか?
②障害認定日の記録が残っていて、当時の症状についての診断書が作成出来るのか?

医療機関のカルテなどの記録は、5年間は保管が義務付けられているそうですが、それ以上の期間については破棄されてしまっているケースもあります。
初診日から時間が経過してしまっている事で、情報が残っておらず、必要な書類が用意出来無い可能性が出てくるのです。

障害年金は、すべて「書類審査」です。
障害年金の受給要件においてとても重要な「初診日」について、たとえ明確な日付がわかっていても、提出する書類でキチンと証明が出来ない限り、残念ながら認めてもらえません。

また、障害認定日時点の診断書を提出する事で、申請が遅れてしまっても遡って認定を受ける事(遡及認定)が出来るのですが、この診断書が無いために遡及が出来ず、受給出来たであろう年金を受け取る事が出来なくなる可能性もあるのです。

 

A子さんは、住所こそ転居により変わっていましたが、通院先は初診からずっと同じ病院でした。そのおかげで、初診日・障害認定日いずれの記録も病院に残っており、発症から5年以上経過してしまっていましたが、無事に申請並びに遡及認定を受け、結果的に最大5年分の年金を受け取る事が出来たのです。
もし、転院などで初診や認定日の記録が残っていなかったなら、これらの認定を受ける事は出来なかったかもしれません。

 

A子さんのように、障害年金の存在を知らなかったために長い間申請をしていなかった、といったケースは、数多く見られます。「年金=年を取ってからもらうもの」というイメージが根強いようです。
診断書さえ揃えば申請が遅れてしまっても遡って認定を受ける事は出来ますが、先程も申し上げました通り、時間の経過と共に書類が用意出来なくなる可能性が高くなってしまいます。
適正な時期に申請する事がもちろん大切ですが、その時期を逃してしまっていてもチャンスはあります。そのチャンスを活かすためには、少しでも早く行動し、受給の意思表示=申請を行う事が必要なのです。

障害年金がもっと周知され、対象となるすべての方が、受け取るべき障害年金を受け取る事が出来るよう、願ってやみません。